「誰かの我慢」で成り立つ物流を終わらせる、持続可能な物流を実現するための「正直な経営」

持続可能な物流と正直な経営

りんくうフレッシュ株式会社、広報担当の水木です。

長引くロシア・ウクライナや米国・イランの情勢。こうした度重なる不測の事態を受け、エネルギー情勢は単なる「値上がり」のフェーズを超え、「燃料そのものの枯渇」という深刻な事態に直面し始めています。

停戦への模索は続いているものの、依然として出口は見えません。このまま石油の輸入停滞が長期化すれば、国内の物流網が完全にストップする——これは決して根拠のない脅しではなく、今そこにある現実的なリスクです。

今回は、この化石燃料の高騰・不足という危機を入り口に、浮き彫りになった日本特有の「商文化の歪み」と、今こそ必要な「マインド変革」についてお話しします。

1. 日本の化石燃料が置かれた危うい現状

日本の化石燃料の現状

まず、私たちの足元を確認してみましょう。
日本は原油の9割以上を中東から輸入しており、そのうち約7割がイランに面する要衝・ホルムズ海峡を経由しています。地政学的なリスクが極めて高いルートに依存しているのが実状です。

資源エネルギー庁の発表(2026年3月23日時点)によれば、国内の国家備蓄と民間備蓄を合わせると約230日分(7〜8ヶ月分)確保されています。数字だけを見れば余裕があるように思えますが、中東依存度の高さを鑑みれば、この備蓄は「最後の砦」であり、他の原油産出国に余剰分を融通してもらう以外では、代わりの選択肢はほぼ存在しないと考えるべきでしょう。

2. 「無印スタンド」の異変にみる供給不足の表面化

ガソリンスタンドの供給不足

燃料不足の影響は、すでに私たちの身近な場所で「逆転現象」として現れています。
車を利用される方なら、少しでも安いガソリンスタンドを探した経験があるはずです。その受け皿となってきたのが、特定のブランドを持たない「無印スタンド(PB:プライベートブランド)」でした。しかし現在、この無印スタンドの価格が、大手系列(元売り直系)の価格を上回るという異常事態が起きています。

なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
通常、燃料は大手元売り企業が仕入れ、自社系列のスタンドへ優先的に供給します。そこで余った分を商社が買い取り、無印スタンドへ卸すのが従来の仕組みです。しかし供給そのものが絞られている現在、元売りは自社系列を維持するだけで精一杯となり、無印スタンドへの供給は後回しにされています。結果として、無印スタンドは高い卸値を飲まざるを得ず、かつての価格優位性が完全に失われているのです。

この供給難は、運送会社が保有する「自社タンク(インタンク)」にも波及しています。元売りが自社スタンドへの供給を最優先するため、運送会社への納入が滞り始めているのです。中には、高騰した燃料をあえて使わず、万が一の際の「備蓄」として温存し始める企業も出始めています。現場はそれほどまでに切迫しているのです。

3. 「見えない危機」と世間の乖離

これほどの危機的状況にありながら、世間がパニックに陥っていないのはなぜでしょうか。現在、ガソリン価格が一定の範囲に収まっているのは、多額の補助金投入や備蓄の放出によって、痛みが「先送り」されているからに過ぎません。

実際には石油の流入が滞っている以上、このままの状況が続けば、いずれ「枯渇」という限界を迎えるのは火を見るより明らかです。現場が強い危機感を抱く一方で、一般社会に緊張感が見られないのは、情報が適切に伝わっていない「見えない危機」の状態にあるからではないでしょうか。私たちは今、近年類を見ないほどの崖っぷちに立たされているのです。

4. 企業を苦しめる「後出し」の価格決定システム

こうした外部環境の悪化に加え、日本の企業、とりわけ運送業界を苦しめているのが、日本独自の不条理な「商慣習」です。

原材料や燃料が高騰しても、それが販売価格に反映されるのは、多くの場合「事後」となります。例えば「3月中に消費した燃料の単価」が確定するのは、3月末日です。つまり、燃料費が高騰しても、少なくとも1ヶ月間は運送会社がその差額を自腹で肩代わりしなければなりません。

一度上がったコストが完全に回収できる保証はなく、多くの場合、企業側の「持ち出し」で処理されてしまいます。この「後出し」のシステムこそが、日本の企業の体力を奪い続けている元凶の一つです。

5. 今こそ必要な「マインド変革」と正直な経営

マインド変革と正直な経営

こうした不条理な構造から脱却するためには、業界全体、そして社会全体でのマインド変革が不可欠です。

デフレマインドからの脱却
「誰かが我慢すれば丸く収まる」という考え方は、もはや限界です。物価や人件費、燃料費の上習を即座に価格へ反映させることを「悪」とするのではなく、正当な経済活動として文化に定着させるべきです。

「正直な経営」への移行
中身を減らして価格を維持する「サイレント値上げ」のような誤魔化しではなく、「コストが上がったから、価格を上げる」と正直に提示すること。消費者の理解を得ながら適切にお金を回していくことこそが、日本経済を存続させる唯一の道です。

燃料サーチャージ制の徹底
運送業界においては、燃料価格の変動に合わせて運賃を上下させる「燃料サーチャージ制」の導入・徹底が急務です。他国では当たり前のように根付いているこの仕組みは、荷主と運送会社が共にリスクを分かち合うための合理的かつ公平な手段といえます。

6. まとめ

もちろん、価格改定や新制度の導入には、一時的な顧客離れなどのリスクを伴うかもしれません。しかし、現在の「歪み」を放置したまま、燃料枯渇や企業の倒産という最悪のシナリオを迎えてしまえば、元も子もありません。

不測の事態が続く今だからこそ、私たちは「安さ」への過度な依存を捨て、価値に見合った対価を支払う「適正価格」の実現に踏み出すべきです。

「正直な価格」を提示し、互いに支え合える持続可能な仕組みを作ること。それが、この未曾有の危機を乗り越え、次世代へ物流と経済をつないでいくための、私たちに課せられた使命ではないでしょうか。りんくうフレッシュは、これからも真摯に現場の真実を伝え、健全な商文化の構築に邁進してまいります。

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