コールドチェーンとは

コールドチェーンとは、その名の通り、低温状態を保ったまま物流プロセスを一貫して行う仕組みです。主に生鮮食品、医薬品、花卉（かき）など、温度管理が必要な商品の品質を保ちながら、生産地から消費者まで届けるための物流体系を指します。

温度管理

コールドチェーンでは、商品の特性に応じた適切な温度を維持することが重要です。例えば、冷蔵（0℃〜10℃）や冷凍（-18℃以下）など、商品に最適な温度範囲が設定されています。

対象商品

生活上一番触れるのは、野菜、果物、肉、魚介類など、鮮度が品質に直結する食品類です。当社が多く取り扱う切り花なども、鮮度や美しさを保つための低温管理が不可欠です。そして、コロナ禍に盛んに動いたワクチンや特定の医薬品も、効果を保つために厳しい温度管理が必要です。

一貫性

生産地から流通センター、倉庫、輸送中、そして小売店や最終消費者に届くまで、全ての段階で温度管理が徹底されています。

コールドチェーンの必要性

気候変動による気温上昇や、人口減少・少子高齢化といった社会的な課題が進む中で、コールドチェーンの重要性はますます高まっています。

特に、気温が上昇すると、生鮮食品や花卉（かき）の品質維持がより難しくなるため、これらを安全かつ新鮮な状態で届けるためには、温度を適切に管理できる物流が不可欠です。また、少子高齢化により労働力が減少する一方で、高齢者を中心とした購買層が増えるため、消費地への効率的な配送体制が求められています。

さらに、物流インフラの整備や技術の進歩に伴い、輸送エリアの飛躍的な拡大が進んでいます。国内外を問わず、遠隔地への配送需要が増え、より広範囲でのコールドチェーンの活用が必須となっています。

また、コールドチェーンは食品廃棄（食品ロス）やフラワーロスの削減にも大きく貢献します。適切な温度管理が行われることで、商品が劣化するリスクが減り、生産者から消費者までの間で無駄が大幅に減少します。これは、持続可能な社会を目指す上で重要な取り組みです。

コールドチェーンの現状と課題

設備不足／施設の老朽化

倉庫業界では倉庫不足が深刻化しつつあります。現在全国にある冷蔵・冷凍倉庫の内、築40年以上の倉庫が全体の約3割を占めています。通常、倉庫は40年超えで建て替えが行われますが、冷蔵・冷凍倉庫業者の約9割を中小企業が占めているので、ほとんどの倉庫について資金の問題で倉庫の新設・建て替えがなかなか進まず、コールドチェーンの一部が機能しなくなる可能性があります。

物価高騰と上がらない運送費

世界情勢の影響による原材料費の高騰や円安、賃金上昇などの影響を受けて物価高騰が進んでいます。冷蔵・冷凍設備のついたトラックや倉庫は燃料、設備や維持管理費が高く、その分物価高騰の影響は顕著です。
日本の運送費は少しづつではありますが上昇しているものの、冷蔵・冷凍の運送費は元の費用が高いため、急な値上げを受け入れる準備ができている顧客は多くありません。こうした状況から、特に中小の事業者は依然として苦しい状態が続いています。

労働人口の減少

物流業界全体でも人材不足が問題視されていますが、特にコールドチェーンでは専門的な技術や知識が必要なため、より影響が大きいです。冷蔵・冷凍の物流に関わる人材は、温度管理や商品の取り扱いにおいて高いスキルが求められます。また、労働環境や労働時間に対する考え方の変化により、業界的にも新たな人材の確保が難しい状況です。中小企業においては特に人件費の制約があるため、さらなる工夫が求められています。

中小企業ができるコールドチェーンの課題への対策

世の中の流れを見て設備投資

現状を打開するためには、市場の需要を見極めた適切な設備投資が競争力を高める鍵となります。最新の冷蔵・冷凍設備への投資は初期費用が高額ですが、長期的には省エネ性能の向上や運用コストの削減につながります。また、IoT技術を活用した温度管理システムを導入することで、従来よりも精密な管理が可能となり、顧客の信頼を得ることができます。

値上げ努力／付加価値の創造

物価高騰の中で利益を確保するためには、単純な値上げだけでなく、顧客に納得してもらえる付加価値を提供することが重要です。例えば、輸送中の商品状況をリアルタイムで確認できるトレーサビリティの導入や、配送時間の柔軟な設定など、顧客にとっての利便性を高めるサービスを提案することで、価格以上の価値を感じてもらうことが可能です。中小企業だからこそ可能な柔軟性を活かし、顧客のニーズに応える独自のサービスを展開することが必要です。

既存人材の育成と新人材の確保

人手不足を解決するには、既存の従業員のスキルアップが欠かせません。例えば、定期的な研修を行い、温度管理や取り扱い技術の向上を図ることで、現場の効率化を進めることが可能です。また、柔軟な労働環境の整備や魅力的な福利厚生を提供することで、業界未経験者や若年層の採用を促進することも重要です。IT技術を活用した作業の効率化や負担軽減策も採用戦略の一環として効果的です。

まとめ

コールドチェーンは、食品や花卉（かき）、医薬品など、多くの生活に密接した商品を支える重要な仕組みですが、その課題は非常に複雑で一朝一夕で解決できるような問題ではありません。しかし、前述したように、冷蔵・冷凍の運送や倉庫事業者の多くは中小企業です。その中小企業それぞれが少しずつ課題に対して対策することで、業界全体としての歩みは大きくなるはずです。

りんくうフレッシュでは、こうした現状を真摯に受け止め、柔軟で持続可能な物流サービスの提供を目指しています。これからも、皆様のご支援とともに、より良い未来のために挑戦し続けます。